皆様が日常的に使う油脂は、多く存在すると思います。
いろいろ並べてみると、オリーブオイル、ゴマ油、バター、マーガリン等々、があります。
室温で液体のものを「油」、固体のものを「脂」といいます。
さて、これらの油を室温でおいておくと、状態が異なることは皆様ご存じかと思います。
上にあげた中だと、オリーブオイルとサラダ油は液体、バターとマーガリンは固体です。
どちらも油脂という点では変わらないのに、なぜ固まりやすさが違うのでしょうか?
その答えは、油脂の構造と油脂同士の収まりやすさが違うから、です。
油脂の基本構造から説明していきます。
一般的な油脂は、グリセリン1分子と脂肪酸3分子が縮合し、3個のエステル結合を有します。
図1に構造を示しました。R1~R3が脂肪酸です。
このR1~R3が油脂の原料によって違います。
植物が原料の場合、R1~R3はオレイン酸やリノール酸が多くなります。
一方、動物の乳や肉が原料の場合は、R1~R3はパルミチン酸やステアリン酸が多くなります。
なお、パルミチン酸やステアリン酸のように二重結合を持たない脂肪酸を飽和脂肪酸と呼びます。
飽和脂肪酸は、炭素鎖の部分が自由に回転でき、図2, 3のようにまっすぐな構造をとることができます。
一方、オレイン酸やリノール酸のように二重結合を持つ脂肪酸のことを不飽和脂肪酸と呼びます。
不飽和脂肪酸は、二重結合部分では自由に回転できないので、図4, 5のように折れ曲がった構造となってしまいます。
例えばステアリン酸3分子がグリセリン1分子と縮合してエステルを作ると、図6のようになり、名前はステアリン酸トリグリセリドとなります。
ただし、ステアリン酸は大きいので、図1のように、3個とも同じ方向は向きません。
同様の原理で考えると、オレイン酸3分子がグリセリン1分子と縮合してエステルを作ると、名前はオレイン酸トリグリセリドとなります。
ここで、ステアリン酸トリグリセリドとオレイン酸トリグリセリドを図7のようにモデル図にしてみました。
これらがたくさんあるとき、どちらが規則正しく並べやすそうでしょうか?
そうですね、ステアリン酸トリグリセリドのほうが並べやすい形をしています。
そうすると、並べた分子同士の間にて、分子間力がより強く働きます。
この分子間力が強いほど、各分子が固定されて動きにくくなる、すなわち固まる、ということになります。
以上、油脂の固まりやすさについて解説しました。
料理やお菓子作りでは、油の種類を間違えると、食べたい温度では固めたいのに固まらない、溶けていてほしいのに固まってしまう、ということもあるかもしれません。
例外はありますが、一般的に
植物が原料だと固まりにくい
動物が原料だと固まりやすい
という風に覚えるとよいと思います。
なお、今回の記事では脂肪酸が3個とも同じ油脂をモデルとして解説しましたが、自然界には多種多様な脂肪酸が存在し、1分子中の脂肪酸が3個とも別なこともあります。
それでも、真っすぐだったら並びやすい、折れていたら並びにくい、というのは変わりません。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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