パイプ洗浄剤の選び方 ~排水溝の詰まりを解決するメカニズム~

化学

はじめに

 掃除のとき、排水溝の詰まりを解消するため、パイプ洗浄剤を使うことがあります。特に詰まりやすいのは、キッチンや風呂場と思います。キッチンにおける詰まりの原因は、主に油脂です。油脂が排水溝に流れ込み、その中で冷えて固まります。油脂は水と混ざらないので、水をせき止めてしまいます。

(油脂には固まりやすいものもあれば、固まりにくいものもあります。以前の記事で詳しく解説しています。)

 パイプ洗浄剤は、水に溶けにくい油脂を、溶けやすい形に変える役割を持ちます。メカニズムを以下で解説します。

油脂が分解されるメカニズム

 油脂は、以下のような構造をしています。グリセリンと脂肪酸3分子がエステル結合しており、水に溶けない分子構造になっています。そのため、パイプ内に油脂がこびりついて蓄積すると、水を流しても落ちないわけです。

油脂の構造

 水に溶けない油脂を溶ける形にするために、パイプ洗浄剤が有効です。パイプ洗浄剤の中には、多くの場合「水酸化ナトリウム($\ce{NaOH}$)」が含まれています。$\ce{NaOH}$は、以下のようにエステル結合を加水分解させることができます。

エステルの加水分解

 上の加水分解反応は、エステル結合をもつ油脂の場合でも、同様に進みます。油脂を加水分解すると脂肪酸ナトリウムとグリセリンが生成します。油脂は水に溶けませんが、脂肪酸ナトリウムとグリセリンは水に溶けます。よって、パイプの中で水酸化ナトリウムが油脂を分解することで、つまりが解消されるということになります。

おわりに

 以上、パイプ洗浄剤が油脂による詰まりを解消するメカニズムを紹介しました。上記のメカニズムより、パイプ洗浄剤では、水酸化ナトリウムが多く含まれるもののほうが、油脂の分解を行いやすいです。パイプ洗浄剤を選ぶ際には、成分表の水酸化ナトリウム量にも気にしてみるとよいかと思います。

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