はじめに
先日、カラムクロマトグラフィーの流速について記事を作成しました。カラムクロマトグラフィーを実施する際には、流速のほかシリカゲル高さにも悩むことが多いと思われます。
直感的には、「高く積むほうがよく分離できそう」と感じる人が多いと思います。結論は、
「長いほど分離はよくなるが、極端に長くしても効果は薄い」
となります。
分離とカラム長さの関係
理論段高さと理論段数
先日の記事にて、理論段高さはvan Deemterの式より求められること、および理論段数はカラム長さを理論段高さで割ったものであることを記しました。
これより、シリカゲルを高く積むほど、理論段数は比例して大きくなっていくことになります。
分離度と理論段数の式
カラムクロマトグラフィーにおける分離度と理論段数の関係は、以下の式で表されます。
\(R=\displaystyle\frac{1}{4}\sqrt{N}\Bigl(\displaystyle\frac{\alpha-1}{\alpha}\Bigl)\Bigl(\displaystyle\frac{k}{k+1}\Bigl)\)
\(R\):分離度 \(N\):理論段数 \(\alpha\):分離係数 \(k\):保持係数
シリカゲルの高さが高いほど、\(N\)が大きくなっていきます。しかし、上式の\(N\)に平方根がついていることから、シリカゲルの高さを2倍にしたとしても、分離性は1.4倍にしかなりません。
私は学生時代、シリカゲルの高さを15cmくらいとして精製を行っておりました。これを例にすると、分離度を2倍にしたいとき、シリカゲルは4倍の60cm積まなければならないことになります。これは、シリカゲル使用量・溶媒量が莫大となってしまい、時間的にもコスト的にも現実的ではありません。
このことから、長いほど分離はよくなるが、極端に長くしても効果は薄いということになります。
個人的な意見ですが、1回の精製で分離を終わらせようとシリカゲルを高くするよりは、分けにくい化合物は2回以上カラムを行うことを視野に入れて、15cm程度の短いカラムを使い、1回あたりの精製を短くするのがよいのでは、と考えます。
参考 分離係数と保持係数
分離度の式に含まれる分離係数\(\alpha\)と保持係数\(k\)は、いずれも大きい値であるほど分離度が大きくなります。これらの値は、固定相と移動相によって決まります。
精製中に移動相組成を変えることがあると思いますが、それは\(\alpha\)と\(k\)を変えていることを意味します。
ただし\(\alpha\)と\(k\)は、分離したい化合物・移動相組成・固定相種類によって変化する非常に複雑なパラメータです。そのため流速や理論段数のように一般化するのが困難なため、ここでは割愛します。
おわりに
以上、カラムクロマトグラフィーにおけるシリカゲル高さについてでした。安易にシリカゲルを高く積むのはやめて、シリカゲルと溶媒量を無駄に消費しないようにしましょう。
以上、参考になれば幸いです。皆様の精製がスムーズにいくことを祈っております。
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